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Antarctica –『南極物語』

8月下旬、名古屋港ガーデンふ頭にて撮影。

ここに係留されている南極観測船ふじは、樺太犬タロ・ジロが観測隊とともに南極へ赴くために乗った「宗谷」の後輩にあたる砕氷艦だ。

[nikon d70 af-s  nikkor 55-300mm 絞り優先オート f4.5   1/2000 iso 200 wb オート ピクチャーコントロール ビビッド]

動物を撮るとき

ひんやりとして気持ちのいい音色がしたと思ったら
右耳の方向から雨上がりの気配が近づいていた

湿っぽくぬるい空からのしずくたちは
春の訪れを示した

からっとした南風が
これからの季節の予兆としてやってきた

どんなに便利で快適な時代になっても
大気を吸って、温度や湿度を皮膚で感じて、食べて眠る
わたしたちはヒト科の生物だ
精巧な建造物を構築し
鮮やかな創造物を配置し
複雑な社会を形成する

もっとも奇妙で興味深く、なぞの多い

写真 2016-02-17 13 30 02

ファインダーのむこう
生き物の黒目がちな瞳と目があうとき
なにをかんがえているのかなあと思う
わかったことは一度もない

ただそう思って異種の生物と向き合う瞬間
交差するそれぞれのエネルギー

その色が
その波長が
その質感が
一枚の画に写される

動物を撮るとき
ほんの一瞬の交流の記録

海水と淡水の混ざるこの場所で ―水色の海獣 another story―

マングローブの林を抜けて、汽水湖へ泳ぎ出る。
皮膚にあたる細かい若葉。
木々の間から木もれびとなって降り注ぐ秋の光。

湖のほとりを歩く人間の子どもと目が合ったのは少し前。
輝く瞳は未来への希望。
若々しい体つき、成熟を拒むような純粋さとあどけなさ。
でも僕は見逃さなかった。
愛らしい瞳のなかに、とてつもなく深い孤独が潜んでいることを。

人間の形をした別物だろうか。
いや、違う。
もはや別物のようになってしまっている人間がいるのを、僕は知っている。
大海に出れば仲間はいるが、僕は陸の際のところで僕たち以外に会うことを楽しんだ。
仲間は言った、「気をつけて、狩られるよ」と声にならない声で。

もう少し近くで見たくて、水際まで泳ぐ。
瞬間、子どもの全体が虹色に光るのを見た。
安全以上、同種未満。
子どもはただ、僕を見ていた。
欲よりも願いの、情けよりも愛の眼差しで。

よく見るとそれは人間の成体で、僕はそいつの魂と出会っていたのだと知る。
まるでまるごと子どものような、ほんとうに。
そのままの、傷つきやすい、まっすぐな、まっさらの、まるいまるいつやめいた魂。

僕を育んだものたちからも、ひとつの世界だけでは生きられないと予言されていた。
子どもみたいな人間は、いつも僕が泳いでいるのを見ている。にこにこしながら。
それでどこまでも泳いでいこうとして、遠く遠く沖の方へ行ってしまいそうになるんだ。
来たほうを見やると、陸が向こうのほうにあってミニチュアの世界が作りものみたいに見える。
かろうじてそこにいるのが見えるのだけれど、僕は急にひとりだって気づく。
慌てて陸に戻ろうとすると、大海原の神様が沖に光を走らせて僕の気を惹こうとする。
ただ陸に面して生き物と交わって、自由に海に戻りたいだけなのに。
青い深い広いどこまでも続く絨毯のようなその海は、その蓋を閉じずにいつでも待っていてくれる?
陸から遠く泳ぎ離れても、際まで戻ってそっと陸に前脚を伸ばしたら、子どもはそこに手を重ねてくれる?
温かな血の流れる、異なる種の美しい生き物。
―wake up

若葉から、朝露の滴が落ちる。
それを冷え切った頬に受けて、私は目を覚ました。
小鳥たちのさえずりが、森に響き渡る。
毎日出会う水色の海獣になっている夢を見てた。
姿の見えなくなったあの生き物を捜しに、私は小舟で漕ぎ出したんだ。
夜更けに眠ってしまったんだね。
それで深く夢を見て、私は少しわかった気がしたよ、君がどんな思いで泳いでいるのかを。

これが夢の中なのかな。
ほんとうはあの海獣が私なのかもしれない。
私は人間になった夢を見てる。
あの生き物は、私を見ていた人間の見ている夢なのかもしれない。

ぜんぶ包んで、ひっくるめて「現実」って名前で呼ぼうと思う。

水面が揺れて、大きく波立つ。
水色の海獣が、なかなかの勢いで泳いでくる。
大丈夫、そんなに慌てなくてもここにいる。
そして私も、小舟でここまで来れるから。

水色の海獣

森を抜けて大海と溶け合う湖に出る。
しんとしたその場所に、きらきらと水の流れる音が響く。
音が大きくなる。

現れたのは、水色の首長竜。
水棲の。
黒目がちの、潤んだ瞳で私を見てる。
悠然と泳いで、水紋を形作る。
均等な、円を描いて。
湖を、大きなキャンバスにして。
なにを考えているか、なにも考えていないのか。
そんなわけない、知性の宿った綺麗な瞳。
口元は、心なしか笑っているようにも見える。

賢くて優しい、儚げで強い、稀有な命。
雪男より哲学的で、UFOより神秘的。

どうしてそこに暮らしているの。
ほかの人に見つかったら危ないよ、
え?危なくないって?
そうだよね、どうしてそんなふうに思ったんだろう。
信じてるんだね、人間を。
好きなんだね、人が。
でも、気をつけて。
私が獲ってしまうかもしれないよ?
なんなのさ、悟ったような顔して。
そんなことしないってわかってる、だって?
買い被るなよ、
ああ、ほんとうに動じないんだね。
まったく強いね、君ってやつは。
ほかに仲間はいるの?
いるけど出てこれない?
そうなんだ。

出逢えたのは奇跡だね、
見つかりたかったのかな、
見つかったのは私のほうかも。
ありがとね、出てきてくれて。

綺麗な水色、なめらかな発色。
それを毎日眺めていたいから、私はここのほとりに住むよ。
泳いでいるところを見ていたいんだ、いつだって。
とても落ち着くから。
安らかな眠りに就ける、毎夜、毎晩。

望ましくない者が、君を狙って遠くから来たら、
私が護ろう。
約束するよ。

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