森を抜けて大海と溶け合う湖に出る。
しんとしたその場所に、きらきらと水の流れる音が響く。
音が大きくなる。

現れたのは、水色の首長竜。
水棲の。
黒目がちの、潤んだ瞳で私を見てる。
悠然と泳いで、水紋を形作る。
均等な、円を描いて。
湖を、大きなキャンバスにして。
なにを考えているか、なにも考えていないのか。
そんなわけない、知性の宿った綺麗な瞳。
口元は、心なしか笑っているようにも見える。

賢くて優しい、儚げで強い、稀有な命。
雪男より哲学的で、UFOより神秘的。

どうしてそこに暮らしているの。
ほかの人に見つかったら危ないよ、
え?危なくないって?
そうだよね、どうしてそんなふうに思ったんだろう。
信じてるんだね、人間を。
好きなんだね、人が。
でも、気をつけて。
私が獲ってしまうかもしれないよ?
なんなのさ、悟ったような顔して。
そんなことしないってわかってる、だって?
買い被るなよ、
ああ、ほんとうに動じないんだね。
まったく強いね、君ってやつは。
ほかに仲間はいるの?
いるけど出てこれない?
そうなんだ。

出逢えたのは奇跡だね、
見つかりたかったのかな、
見つかったのは私のほうかも。
ありがとね、出てきてくれて。

綺麗な水色、なめらかな発色。
それを毎日眺めていたいから、私はここのほとりに住むよ。
泳いでいるところを見ていたいんだ、いつだって。
とても落ち着くから。
安らかな眠りに就ける、毎夜、毎晩。

望ましくない者が、君を狙って遠くから来たら、
私が護ろう。
約束するよ。