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遠く ーFar awayー

[nikon d70 nikkor 55-300mm 絞り優先 f9.5 1/350 iso500 ]

立て続けに訪れるハリケーンみたいな台風の合間に、晴れ渡る秋の空。

遠く、遠く、海岸線の方角にぽっかりと浮かぶ美味しそうな雲たち、撮りたいのを運転席でこらえこらえてハイウェイをゆく。

こんな空に似つかわしい、南国の一枚。

ハイキーな色味は珊瑚礁の穏やかな浅瀬をより魅力的に映してくれる。

 

宝箱のなかの映写機

大きな狼の子どもをひろった小さな梟の雛がまるで獲物をしとめたかのようによいしょと向こうの森まで飛翔する。

そのうしろ姿を少し下のアングルから撮った映像みたいな、へんな夢を見て目が覚めた。
空はまだ藍色で、下のほうからうすらぼんやり朝の気配が近づいていた。

夢に関する研究はまだ進んでいなくて、これからも進むかどうかは果たして疑問で、不思議な感じのままでいいのかもしれないねと思ったりもする。
占いや分析の言葉で夢の内容を整理する活動も人間はしていて、たまに見てみるとおもしろい。

いろいろなものの形に動物をみる傾向は児童期に多いとされているけれど、ほんとうのところはわからない。
子どもの時代に与えられる本やテレビやグッズには、どうして動物のものが多いのだろう。
大人になるにつれて、大きくなって目の高さがあがって、生命溢れる大地からすこし遠ざかり、無限に広がるかのように高かった空は近づいてしまう。より身近なものに意識がいき、ふだん関わりの少ないものたちとの距離があく。アフリカも、宇宙も、夢の国のおとぎ話も、みな宝箱のなかにしまわれていく。

が、しかし、大人のいいところはそれらをいつでも自分の気分しだいで取り出して遊べることのような気もする。与えられるのではなく、意志をもって。
まわりにいる遊び上手な大人、楽しみ好きな大人たちは、みなおもしろそうでカラフルななにかを自在に手に取って愉しんでいるようにも見える。
実に楽しそうに。宝箱のなかには無尽蔵に色が散りばめられていて、それは底抜けの構造で、世界に、宇宙につながって広がり続けている。手を突っ込んで、この際、身ごと投げ込んで、もぐもぐと味をしめたいところだ。そしていつでも、その箱は閉じたり開けたりできるだろう。なんなら網戸でもつけて、のれんでも、カーテンでも。精巧なステンドグラスでも。なんとなく、きれい。

夢を見たところからたまには少し理論的な視点に立ってみようかと思ったけれど、結局さいごには映像になる。
それを映す映写機もまた、宝箱のなかのヘビロテなおもちゃなのかもしれない。

無伴奏チェロ組曲 J・S・Bach

太い太いパイプを通る。
壁面は厚く、木肌は温かい。
そこを抜ける強い音、重なり、交わり、一体となる。
ねじれながら、揺れながら。
確実に前へ、前へ、その向こうへと。
幅の広いステップを踏み、上がり、下がり、また上がり。

繰り返す主題。
しつこく、甘く。
せつなく、激しく。

身体の中心から、世界に開かれる宇宙の魂。
こみあげる、突き抜ける。
エピローグの高まり。
ほとんど悟り。

再生、再生、再生。

サウンドのミルフィーユ。
一度に召し上がって、とろけるように。

遥か昔から伝わる、美しき音の塊。
絶妙な取り合わせ。
バッハ殿、時代は変わってここは日本。
私たちはあなたの作品を現代もこうして愛でています。

何千、何万、何億の人間の、記憶が宿る。
音の、一粒一粒に。
その、香り立つような艶めきに。
煮えたぎる欲望も、ささやかで逞しい願いも。

どれだけの感情が、情動が、この曲に織り交ぜられてきたのだろう。
時を越えて、長く遠く。
音楽を通じて、過去と未来が繋がる。
現在を経て、彼方から、彼方へと。
一筋の、大河のように。

この祈りも、いつしか未来のどなたかに伝わるだろうか。
その片鱗でも。

こげ茶色の、木目のような質感の、もっくりとしたサウンドに乗せて。
協奏曲をまるごと、
耳から歓迎しよう、
鼻から息を抜いて、
全身を作品にくるませよう。

悠久の時代を、旅するように。

光の狩人

一眼レフを持って、玄関を飛び出す。
外は一面の青空。
光は太陽の子どもたち。地球に降り立ち、色に変わる。
すべての色は音を奏でる。
青色の音は、しんとした澄んだ音。
どこまでも奥深く、かすれて響く。
太陽の光は真っ白で、絵で見るよりも肌に痛みを与える。
つきーんと突き刺さるような明るさが瞳を攻める。
少し歩くと、空と大地のはざまに緑が横たわる。細く、平たく。
緑はもくもくと膨らみ、どっかりと胸に響いて安心感をくれる。
青と白と緑は基本色。
そこへ、バナナやオレンジの黄味が心地よく刺さって加わる。
黄色系は新たに、潤みを与える。金属音よりもなめらかな、こくのある響き。
一歩踏み出すごとに浜にめり込む足、それを包み込む細かい砂。
白の音は平面。凪のように横にまっすぐに奏でる生真面目で確実な乾いた音。
履いているサンダルは茶色だが、人工物の発する音はずいぶんと安っぽい。
広大な浜辺に気まぐれに点在する背の低い木々。
ほんとうの濃い色の木肌からは、チェロとよく似た音が聴こえる。
身体を両脇から持ち上げて支える力強く深い音。

にぎやかでカラフルな視界を、広角レンズで拾い上げる。一気に。

光を狩り、掌におさめる美しい世界。

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