何度も夢に見る水辺の景色。
水深わずか数センチほどの浅い波打ち際。
河でもない、水たまりでもない、広い広い海のはしっこ。
どこまでも続きそうな白い砂地。
幅も奥行きも底知れない長さで、黄色がかった薄いピンク色に染まっている。
夕暮れの光があたるとオーロラ色に滲んで、きれい。
視界のところどころに人影が映る。
てろんとした素材のシンプルなワンピースを着た婦人。
サーフボードを抱えて軽い足どりで歩く半裸の若者たち。
ランニングにパンツ姿の子どもたち。

声は聴こえない。
りんりんと響く静かな音だけが耳をかすめる。
なんの音色だろう。
音に合わせて、光の飛び散った水面が反射する。
オーロラ色、ラムネ色、レインボー。

天国みたいな幻想のランドスケープ。
この夢のあと、清らかな気持ちで目覚められる。

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雨の日が続いています。
陽の光が恋しくて、憂いの面持ちで朝を迎えています。

何年も前に、
大好きな夏が去り行くころ、友人に宛てた手紙にこう書きました。
「秋も好きになれるよう工夫したいね」
友人はそのくだりをいたく気に入り、繰り返しその一文を用いています。
それ以来、工夫という言葉を少し気に入るようになってきました。
我慢でもなく、ごり押しでもなく、無理な感じでもなく、可能性に対して知恵を働かせて実際に取り組んでみているというイメージがいい。
ぐずついた天候の続く今日このごろ、
ふとそのことを思い出して、反芻しています。

明るい色の傘、よほどの大雨なら差そうかな。
HUNTERのレインブーツ、大活躍。
雪降る隣県に勤めたころ、買っておいて正解だった。
小学生の色とりどりの傘が通り飾る。
しずくのひと粒注視するとそこには辺りの世界がぎゅっとつまったように映っている。
雷は鼓動、力強く響く。ゼウスの怒り。
灰色の雨雲、勢いよく風に運ばれる。
白い雲がうしろに控えていたんだね。
一瞬の晴れ間、ここから見て手のひらほどのせまいせまい雲の隙間、
強い光、
アスファルトを照らす。
黒い路面が反転して白く眩しく輝く。
ダッシュボードからサングラスを探している隙に、
あっという間にまた曇り空。
この夏の太陽は休暇が長いみたいだ。

わずかな青空、短い晴れ間、その眩しさ、急速充電。栄養ドリンク。

毎日たくさんの発見があります。そこそこ楽しく過ごせます。
工夫を重ねて。
日照時間の長い場所、その土地に暮らすまでは。

こんど晴れたら、
抜けるような青空を背景に写真を撮りたい。
旅の途中、雲の向こうには太陽がいつだって変わらずにあるのだと気づいたけれど、
直に触れたい、光に。
顔が熱いな、日焼けしてるかなと思いながら、歩き回りたい。
いい気分なのにしかめ面なのは、眩しすぎるから。
天高く馬肥ゆる秋、って定番の台詞を言いたい。
秋の味覚に想いを馳せたい。
栗のシールをネイルに飾ろうかな。
季節の変わり目のせつない空気を感じたい。

年末まであっという間。

やってこい、秋晴れの空。