よく晴れた朝、少し早く家を出て空を見上げる。
高度10,000メートルの上空、機体から伸びる真っ白な飛行機雲。
地平線に近づくほど、空の青は薄く、透明になる。
絵の具とも海とも違う、澄みわたるクリアな青。
大気中のいったい何に色がついてこんなに安らぐ色が生まれるんだろう。
遠い異国へ向けて、経由する成田へと向かういくつもの白い機体。
何本も伸びる、飛行機雲。
人もまばらな朝の時間に、それをカメラにおさめるのは私の小さな楽しみのひとつ。
あんな高さに人体がいくつもあって、今まさに、いっぺんに移動しているなんて不思議。
その機内に思いを馳せる。
どんな人たちが、どんな格好をして、なにを話しているのだろう。
どんな言語が飛び交い、そこにある飲み物や食べ物は、どんなにいい香りを発しているのだろう。
ビジネスの旅、帰省の旅、新婚旅行、はじめてのひとり旅。
朝八時。
空港島から放射状に放たれたジェット機たちが、私の住む街から見える。
鉄でできたとは思えないほど、軽やかに、なめらかに大空を横切る。
いくつもの旅を乗せて、まっすぐな白い軌跡を描いて。
空港も、気持ちがいい。
高い天井は心身をのびやかに緩ませてくれる。
巨大な窓ガラスの外にはどこまでも見渡せそうな海と空。
外国語のアナウンスも耳に心地いい。
見送る人、旅立つ人、ただ飛行機を見に来ただけの人。
思い思いに時を過ごす人々を眺めるのもいい。
人々がそれぞれに自由の気配をまとい、泳ぐように空間を行きかう。
お風呂ともマッサージとも違って、ほどよい緊張感を保ちつつもリラックスしている。
だからときどき、用がなくても空港に出かける。
そのきれいな場のエネルギーを、ただ味わうために。
いつだって、なにかを感じたくてどこかに辿り着く。
その感触を味わいたくて会いに行く。
きらめくような生命力を感じる人。
大地のパワーを宿したような安心感をもたらす人。
流れる水のような清らかさを持つ人。
咲き誇る南国の花のようなよき香りを、その存在から発する人。
辿り着いたその先で、ともに味わう夢みたいな現実。
空を見上げて、白くまっすぐな雲を眺める。
明日も晴れて、と小さく祈って。