少し歩いて、場所を移すと一味ちがった表情を見せてくれる。
海岸はいつもそうだ。

宿の目の前、ウエストエスプラネード沿いのビーチは、遊泳用の網が張られていて入り江のよう。
水平線は遠く、海が奥と手前に分かれているような印象を受ける。安全に泳げる人間の領域は無論、手前の側だ。
ビーチの端のレストランをはさんだ反対側にはヨットハーバー。
こういう風景には、オープンテラスの店がよく似合う。フィッシュ&チップスをつまみに土地のビールを味わう。完成度の高い景色がその味を引き立てる。たまらない至福の時。

洗練された町並みを歩み進むと、半島のような地形の向こう側にまた海が見える。マンリービーチだ。
今度はダイナミックな視界を占める。太平洋。
波に飲まれてはまた立ち上がり、飛沫とたわむれるサーファーたち。テイクアウトの食べものをカモメの群れに狙われて明るい悲鳴をあげる若い女の子たち。年老いた犬と一緒にゆっくりと散歩をする老人。あどけない表情で見えないなにかを掴みとるかのように手をふってよちよちと歩く小さな子どもたち。
開けた浜辺では、人々の表情や動きがゆったりとしたものに見える。のびやかに、ゆるやかに。
すぐ近くにあるジェラート屋さんのアイスクリームは、コーンにココナツがびっしりとついていてたまらなく美味しい。
山から陽が上り、水平線へと沈むその夕焼けはいつも荘厳で、畏れさえ感じさせる豊かさをたたえる。
日本でも、海外でも、西海岸はいつだってその美しさを誰もに平等に惜しみなく見せてくれる。
そして、この旅ではあらためて東海岸の魅力にも触れることができたように思う。
山側に沈んだ夕陽は、その向こうから強く光を照らし、山の端をくっきりと際立たせる。
溢れるピンクとオレンジが、水面をきらきらと輝かせる。
行きかう人々をも、活き活きと輝かせる。

海岸を巡る旅、それもまたよし。