ハンドルを握り、遊びの少ないアクセルを緩く踏む。
動き出し、車体が日なたに進む。
木漏れ日を受けて、バックミラーに強い光がかちっと走る。
車内には重低音、窓からは南風。

ってそんな感じのドライブが最高だけど、真っ暗な早朝に玄関を開けて外に滑り出してみる。
走り始めがちょっと心細いような気分なのは、きんと冷えた夜の空気がまだ主役の座を譲らないから。
いつもより車通りの少ないバイパス、すこしだけスピードを上げる。
BGMは♩Lincoln highway  by Sublime
音から朝陽を先取りするみたいに、期待を込めて。
到着予定は午前7時。生まれたての朝の光をキャッチすべく、スモールカーを走らせる。

運転中は、瞑想のようにビジョンが展開する。
ある瞬間、深海のような濃紺の空。
次の瞬間、一直線の横棒。水平線。
地表から、空は白んできてようやく夜がその座を明け渡す。
夕方みたいな、それよりも新しい光。
どこまでも続きそうな浜辺に、カメラマン。
ゆるやかな波をつくる浅瀬に、サーファー。

めりこむ砂にすこし苦戦して、波打ち際へ。しゃがむ。低く、低く位置を構えてワンショット。
小さく白い海鳥たちが、ごく速いスピードで水際を駆けて一気に飛び立つ。
またも三脚を使うのをためらってしまった。ついつい面倒くさくなってしまう。
岩場に登り、空を仰ぐ。一分一秒、刻一刻とその色を変える。
ブラック、ネイビー、ブルー、ライトブルー、ピンクとイエローの混じった、いつもの空色!
シャッと筆を走らせたような、飛行機雲。
大きな岩の向こうから後光みたいに照らす、生まれたての太陽。
アザラシのように浮かぶサーファーたち、黄金の光を受けて、笑顔。
車から降りてくる青年たち、「気持ちいい!」って大きな声で。
叫んじゃう気持ちもわかるよ。

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往復5時間、決して長くない。