航行中

海原にもオアシスのような海域があることを知った。
光射す暖流で力を得て、エネルギーを補給して、新たな航海技術を学んで、何度でも発進する。
航行をとめずに、外洋を進む。
壊れながら、直しながら、機能を増強して、目的の地へ向かう。
そうあるのなら、私たちは素敵な船の主でいられる。
明るい浅瀬が好き。砂紋の広がる砂丘みたいな浅瀬が。
そこで漂っていたら気持ちいいだろうな。穏やかで、安全で。
でも見ていたいんだ、外洋の青。

いいと思うことをして、いいと思わないことをしないだけ。
そのアンテナの感度を上げることと。
メンテナンスを怠ると感度が下がる。
転覆なんてありえない。
たいせつなこと、生活を磨くこと。

食べる、眠る、暮らす。
掃除、料理、小綺麗な装い。

静かな通り
生命を司るキッチン
新鮮な食材
色鮮やかな野菜と果物
陽のあたる明るい居間
なめらかなフローリングの木肌
長く使える上質の家具
目にやさしい観葉植物
まろやかなコーヒーの香り
その滴の落ちる穏やかな音
夜にかけるスローな曲
オレンジ色の間接照明
特別な日にあけるワイン
趣味のよい食器
美しい盛り付け
艶めくカトラリー
耳に心地よい異国の言語
壁には次なる目的地の画像
清潔で肌触りのよいリネン
それらに包まれて見る夢、設計、計画、現実、実現する未来

そこでなら、追い込まれてもこなしていける。
無理を押すことをしたいときもある。
それが楽しいときだってある。
外洋に出て、深い青のなかを進んで、楽園に辿り着きたいから。
いい予感にしたがって、素直に、シンプルに、楽しい気持ちを育んだままで。
おもしろそうなことをするだけ、いつだって。
本能が、おもしろさに反応する。得意分野。
深呼吸してすこし思いを馳せてみたら?
物語のさなかにあるおもしろさを全身で体感してるんじゃない?
どっぷり浸かって、とことん味わってるところなんだ。
体当たり、思いっきり、勢いも、衝動も、刺激も、ぜんぶ込みで。
新しい風に吹かれて、見たこともない別の船に出会って。
起こす波を受け合って、揺れて、踊るように進んで。
波と波は影響し合って、新しい波を生む。
ずっと凪より、ずっといい。
ひとりきりで思い上がって進むよりおもしろい。
むしろいい。

メンテナンス、こうして記すことそのものも。
楽しむこと、楽しめるものを持つこと、楽しめる環境を創ること。

朝、降ってきたいい考えをただ実行するだけ。